公正証書遺言は遺言の方式の一つです。公正証書遺言は普通方式の遺言で、その特徴として、遺言者が自筆で遺言書を書かずに、公証人に遺言書を作成してもらうことが挙げられます。
公証人に遺言書を作成してもらう方法は主に二つあります。遺言者が公証人役場に行って、公証人に作成してもらう方法と、遺言者が公証人役場には行かずに、公証人に来てもらって、遺言書を作成してもらう方法です。公証人の介入のおかげで、公正証書遺言は自筆証書遺言より、争いが生じにくいです。
自筆証書遺言と同じように、公正証書遺言も一定の方式にしたがって、作成する必要があります。その要件は主に五つあります。この要件を満たさない公正証書遺言は無効になりますが、公正証書遺言を作成するのは、遺言者ではなく公証人であるため、公証人の監督により作成された公正証書遺言は、民法969条の五つの要件を満たすよう作成されます。
しかしながら、判例では、無効になったケースもあります。無効になった主な理由は、形式的に民法969条の要件を満たしているが、実質的に満たしていないことです。たとえば、民法969条2項により、「遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること」が必要です。口授というと簡単なように聞こえますが、認知症にかかっている遺言者は完璧に口授できないケースがあります。たとえば、遺言者が他の人の発言に対し、ずっと「その通りです」、「はい、そうです」と話した場合は、形式的には口授になっていますが、実質的に発話していないので、口授とはいえません。そのため、この場合の公正証書遺言は無効になります。
また、民法969条4項により、「遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名、印を押すこと」が必要です。この「承認」により、公正証書遺言が無効になったケースがあります。たとえば、認知症にかかっている遺言者が、「はい」という返事をもって、承認したとします。形式的に、遺言者は筆記の内容を承認しています。しかし、認知症のせいで、遺言者が遺言能力を有していないと判断された場合、遺言能力がない遺言者の承認は、形式的には承認になしますが、実質的に承認になりません。そのため、この場合の公正証書遺言は無効になります。
また、民法969条1項により、証人の立会いが必要です。この証人について、誰でも証人になれるというわけではありません。民法973条により、未成年者、推定相続人,公正人の配偶者などは証人になれません。仮に、証人資格を有しない人が証人になった場合に、公正証書遺言は無効になります。
公正証書遺言の要件は、条文により規定されていますが、その解釈については、ややこしいところがあります。公正証書遺言の作成に興味がある方は、作成する前に、専門家との相談をお勧めします。要件の勘違いにより、せっかく作成した公正証書遺言が無効になる可能性があります。
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